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🌍LNGは本当に“クリーン”なのか?

🌀本記事は、シリーズ「持続可能なエネルギーと暮らし」第3回です
本記事は、SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に関連するシリーズの一環として執筆されたものです。第1回では、煙のない未来の食卓を目指す「クリーン調理」の取り組みを紹介しました(▶ 前回の記事はこちら)。今回は、「本当にクリーンなエネルギーとは何か?」をテーマに、液化天然ガス(LNG)の実態に迫ります。

――ハリィと仲間たちの対話から見えるエネルギーのリアル

2025年。地球温暖化の危機が深まる中で、「LNG(液化天然ガス)」は“クリーンな代替エネルギー”として脚光を浴びてきました。でも、それは本当に正しいのでしょうか?

本記事では、環境活動家のハリィとその仲間たちの対話を通じて、LNGの真の姿を浮かび上がらせていきます。


第1章:希望としてのLNG

春の午後、スイスのジュネーブ郊外。木漏れ日が揺れる森の中庭。そこに、動物たちが静かに集まっていました。

「LNGは石炭よりCO₂排出が少ない。これは事実だよ。」

と語るのは、ジャーナリストのジャン。フランス出身の彼は、理想と美意識を大切にするトリコロールの使者です。

彼の言葉に頷いたのは、クールなウサギのドクターラビ。

「アメリカやヨーロッパでは、LNGが“過渡的な脱炭素エネルギー”として注目されている。今のところ、再生可能エネルギーだけでは補えない部分を担っている。」

でも、そんな中でひとり眉をひそめるハリィの姿がありました。

「本当に、それだけで“クリーン”って言えるのかな……?」

ハリィは欧州のパンクな環境活動家。デモにも積極的に参加する一方で、内面はとても誠実で繊細です。彼の胸には、あるデータが引っかかっていたのです。それは、“LNGの生産と輸送の過程で、メタンという強力な温室効果ガスが漏れている”という事実でした。


木漏れ日が揺れる森の中庭。そこに、動物たちが静かに集まっていました。
木漏れ日が揺れる森の中庭。そこに、動物たちが静かに集まっていました。

第2章:ハイダラの影と「問い」の始まり

──LNGは、私たちが思っているほど「クリーン」なのか?

夕暮れの森。淡い金属光沢の枝がうねり、ランプの光が夜気に溶けてゆく。

静けさの中、ハリィはひとりベンチに腰を下ろしていた。会議の喧騒から離れ、ただ空を見上げていた。LNG。液化天然ガス。燃やせばCO₂は少ない。


けれど――それだけで「クリーン」と呼べるのだろうか?


その時、背後からぬるりと近づく気配があった。ケープをまとった影。頭は、鋭く裂けたようなハイエナのシルエット。

「“クリーンなガス”……ふふ。便利な言葉だな。」

ハイダラだった。正体不明の情報屋。どこからともなく現れ、真実と混乱を同時に運ぶ存在。

「…聞いてたのか?」ハリィは問い返すことなく、目だけで反応した。


「LNGは“燃やす”ときは確かにCO₂が少ない。だが問題は、燃やす前にある。採掘、冷却、運搬――その過程で大量に漏れ出すメタンを見て見ぬふりか?」


「メタン…?」


とハリィ。


「そう。CO₂の20倍以上も地球を温める“沈黙の気体”。目に見えず、臭いもせず、いつの間にか空を満たす。」


ハイダラの声は静かだが、その言葉には毒と真実の刃が含まれていた。

少し離れた場所にいたDr.ラビも加わった。彼は冷静に補足する。

「実際のところ、LNGの全行程を足し合わせたカーボンフットプリントは、石炭よりも33%大きいというデータもある。しかも――新型のLNG船の方がメタン漏れが多い。効率化の裏で、燃え残ったメタンがそのまま大気へ逃げている。」

「それでも石炭よりはマシだ、と言うのだろう?」

とジャンの声が空から聞こえてくるようだった。

ハイダラは、フードの奥で口角をゆがめた。

「“マシ”かどうかを比較する時点で、既に“選択肢の枠”が狭いのさ。」

静寂が落ちた。金属の枝がわずかに揺れ、光がさざ波のように広がる。

やがてハリィは、ぽつりとつぶやいた。

「…本当に、ぼくらは“クリーン”の意味を理解してるのかな?」


「“クリーンなガス”……ふふ。便利な言葉だな。」
「“クリーンなガス”……ふふ。便利な言葉だな。」

📊第2部 完全版:データで見る「LNGは本当にクリーンなのか?」

🔍 なぜ“燃焼時”だけを見てはいけないのか?

液化天然ガス(LNG)は、「燃やすとCO₂が少ないからクリーンだ」と言われがちです。しかし、私たちが見るべきは**“ライフサイクル全体の排出”=カーボンフットプリント**です。

Persefoniの解説によれば、GHG排出は以下の3つのスコープで評価されるべきです【Persefoni†source】:

  • Scope 1:LNGを燃やすときに発生する直接排出(例:発電時のCO₂)

  • Scope 2:液化に使用する電力などの間接排出

  • Scope 3:採掘・輸送・再ガス化・インフラ建設など、全体の工程で発生する間接排出

👉 多くのLNG評価はScope 1だけを見ています。問題はScope 3にあるのです。

🧪 5つのステップで見る「LNGの実際の排出」

Solutions For Our Climate(SFOC)の最新レポート【SFOC†source】では、LNGのライフサイクルを以下の5段階に分けてGHG排出量を分析しています:

フェーズ

内容

主な問題

①採掘

フラッキングでメタン採取

メタン漏出(fugitive emissions)【全体の40%】

②液化

マイナス162℃まで冷却

大量の電力消費によるCO₂排出

③輸送

LNG船で国際輸送

メタンスリップ(特に最新鋭船)

④再ガス化

LNGを気体に戻す

熱エネルギーによる排出・漏れの再発生

⑤利用(燃焼)

発電・加熱

Scope 1のCO₂排出(最も「見える」排出)

🚨 結論:石炭よりクリーンどころか、総排出量は33%上回る可能性(NETL/SFOC報告一致)

🛳 メタンスリップ:静かなる破壊者

SFOC報告では、特に「輸送」段階の**methane slip(メタンの未燃焼放出)**に注目が集まっています。

  • LNGキャリア船の燃料には“ボイルオフガス”(自然に蒸発したメタン)が使われる

  • 最新の“高効率”船ほどメタンを完全燃焼できず、大気中に漏れ出している

  • この漏れたメタンはCO₂の80倍(20年換算)の温暖化効果を持つ

🧊 エネルギー効率と気候負荷が逆転しているという皮肉な構造。

📉 距離が変えるフットプリント:最短 vs 最長ルート

国土交通省のCO₂排出簡易算定ツールによれば、物流におけるCO₂排出量は以下のように変動します【国交省†source】:

  • 輸送距離×重量に比例して排出量が増加

  • LNGは重く、距離が長いほど輸送だけで大きな排出が発生

  • 日本のような遠隔地輸入国では、「クリーン」の看板を掲げにくい

✈️ 最長輸送ルートでは、輸送だけでフットプリントの20%を超える例も

🧭 それでもLNGを選ぶ理由は?

一時的な「橋渡しエネルギー」としての意味:

メリット

リスク

太陽光・風力の不安定性を補完

過渡的のはずがインフラロックインされる恐れ

石炭よりも「燃やせば」排出が少ない

Scope 3を含めると石炭より高排出になる場合も

すでに国際インフラが整備されている

投資回収のため長期依存の圧力が働く

⚠️「短期的な最適解」が「中長期的な破壊要因」になりかねない、という構造的ジレンマ。

💭 最後に:エネルギーの「真のクリーン性」とは?

「クリーン」とは何か?燃やす瞬間だけの美しさではなく、採って、運んで、使って、残すまでの全てが問われています。

🌱 私たちができること:

  • エネルギー政策に対してScope 3の視点を求める声を届ける

  • LNGに代わる本質的にクリーンな再エネ投資を後押しする

  • 市民・企業・金融機関が、**LCA(ライフサイクルアセスメント)**で判断すること


📚参考資料

・Solutions For Our Climate(2024)「The True Climate Impact of LNG」(https://forourclimate.org/insights/21)

・Persefoni「温室効果ガス(GHG)排出量の計算方法」(https://www.persefoni.com/ja/blog/ghg-emission-calculation-methods)

・U.S. Department of Energy, NETL(2019)「Life Cycle Greenhouse Gas Perspective on Exporting LNG from the United States」(https://www.energy.gov/sites/prod/files/2019/09/f66/2019%20NETL%20LCA-GHG%20Report.pdf)

・国土交通省「物流CO₂排出量簡易算定ツール」(https://www.mlit.go.jp/pri/shiryou/press/pdf/shiryou110530_1-2.pdf)

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