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ホルモンをかき乱す化学物質と次世代への影響:科学が語る“見えない継承”とは?

更新日:2025年3月30日

静かにホルモンをかき乱す“見えない存在”
静かにホルモンをかき乱す“見えない存在”

ハリィ(静かに、しかし確信を持って)

ジャン、今日はちょっと耳障りな話かもしれないけど、どうしても話しておきたいテーマがあるんだ。私たちの中にある「ホルモンの指揮系統」──内分泌系が、目に見えない化学物質によって静かにかき乱されていること、知っているかい?


ジャン(首をかしげながらも興味津々に)

ホルモンの“ボスシステム”が乱されている?なるほど、それは身体の中で起きることだよね?でも、外からの化学物質がそこまで影響を与えるのかい?つまり、毒性ってこと?


ハリィ

もっと微妙なんだ。劇的な中毒じゃない、でも確実に生物の“ふるまい”を変える。それが内分泌かく乱物質(EDCs)。プラスチック、農薬、防腐剤、そしてある種の薬物。私たちが日常で触れるものの中に、ホルモンの真似をしてシステムに入り込み、働きをかき乱す物質がある。


ジャン(少し不安げに)

まさか、そういうものが…ボトルの水や化粧品の中にも?でも、それって影響があるとしてもすごく微量なんじゃない?


ハリィ(頷きながらも真剣に)

その通り、ジャン。量は少ない。けれど、問題は「タイミング」と「感受性」なんだ。特に影響を受けやすいのは胎児や子ども、そして繁殖に関わる時期の生物たち。実際、マウス、カエル、魚、鳥──多くの動物で、生殖器の発達異常や行動の変化が確認されているよ。しかも恐ろしいのは、それが遺伝子の配列を変えるわけじゃないということ。いわば「遺伝子のスイッチ」だけを操作する、“エピジェネティック”な干渉だ。


ジャン(声を落としながら)

つまり…それは、見えない手が未来の世代のスイッチを勝手に入れ替えるようなものか…。それは確かに、静かだけど根深い干渉だね。


ハリィ

そして問題は、科学的にその影響が“証明された”と断言できないケースが多いこと。研究は増えているけど、まだ“決定的な毒性”とはみなされにくい。それを根拠に、規制が進まない。あるいは、経済的・政治的圧力で規制が後回しにされている例もあるんだ。


ジャン(冷静に補足しながら)

欧州委員会でも、EDCsの規制をめぐって産業界と科学界のあいだで強い緊張があると報じられている。科学的根拠を整理するのが遅れてしまえば、現場では「曖昧なまま」使い続けられるリスクがあるね。フランスでは化粧品業界のロビー活動が影響を与えた事例もあった。


ハリィ

それでも、科学の現場からは強い警鐘が鳴らされている。複数の動物実験で、子どもだけでなく“その子ども”にまで影響が現れた──つまり世代を超える影響が示唆されたケースもある。ジャン、これは単なる“個体の健康”の話じゃない。生態系そのものの話なんだ。


生態系そのものの話
生態系そのものの話


ジャン(目を伏せてから、真っ直ぐハリィを見る)

ハリィ、君の話はいつも真実を突いていて…少しだけ、怖くなる。でも、だからこそ、僕たちはその「見えにくい問題」に光を当てることが大事なんだと思う。それに、もし未来の子どもたちにまで影響が及ぶなら、それは…倫理の問題でもあるね。


ハリィ(静かに)

科学は、もう“知っている”。次は、社会がどう応えるかだ。


ジャン(少し間を置きながら)

でも…ハリィ、そうだとしても、私たちは一体何を信じればいいんだろう?世の中には「安心ですよ」と言う専門家もいれば、「危険です」と警告する人もいる。科学の世界で意見が割れている時、一般市民にできることって…結局、無知か過剰反応になってしまいそうで。


ハリィ(うなずきながら、丁寧に)

とても大事な問いだね。確かにEDCsについては、影響の「確実性」や「閾値」が明確でないことも多い。でも、それは「安全が確認された」わけじゃない。ただ「まだ確信が持てない」だけなんだ。“科学的不確実性”は、無視の根拠ではなく、むしろ予防の理由になるべきだと思う。


ジャン(静かに目を細めて)

予防原則、か…。たとえまだ決定的な証拠が揃っていなくても、被害が取り返しのつかないものなら、行動すべきだと。でもハリィ、それは便利な社会や経済を犠牲にするという声にもつながるよね。私たちの生活を支えているものの多くが、プラスチックや化学製品でできている。


ハリィ(穏やかに、だが確信を持って)

だからこそ、“ゼロか百か”の議論ではなく、“転換の方向”を選ばなければいけない。一人ひとりができる行動──製品を選ぶこと、情報に目を向けること、声を上げること。そして社会全体としては、科学と政策をつなぐ仕組みを育てる必要がある。

たとえば、EDCsの多くは代替化が可能だし、製品表示の透明性も高められる。市民がそれを求めれば、企業も変わる。遅くても、変化は始まる。


ジャン(深くうなずきながら)

…それは、行動が“科学を待つ”のではなく、科学に耳を傾けて、次の選択をするということだね。ハリィ、君の語りにはいつも芯がある。それでいて、誰かを責めるわけじゃないのがいい。


ハリィ

責めても未来は来ないからね。だけど、ちゃんと見ようとしなければ、未来は奪われるかもしれない。


ジャン(小さく笑って、視線を遠くに向けながら)

責めても未来は来ない──その通りだ。 けれど、私たちは時に“見る”ことを怖れて、意図的に目を逸らす。わかってしまった瞬間に、「責任」という名の光が、自分の影をくっきり映し出すからね。

僕らは、完全な理解を持たずに、判断することに耐えねばならない。 確実性ではなく、可能性と誠実さをもって未来を選ぶ── それが、科学が与える問いへの、人間としての答え方なのかもしれない。



🔬 最後に:科学的な知見から見たEDCsの現実

内分泌かく乱物質(EDCs)は、哺乳類、魚類、鳥類、両生類など多くの種において、生殖系、免疫系、行動にわたる多様な影響を引き起こすことが、複数の研究で報告されている。

たとえば、2021年のクロススペシーズ比較研究では、BPA(ビスフェノールA)、フタル酸、カフェイン、低酸素環境などの曝露が、「影響が世代を超えて持続する」ことを示している。これらの影響はDNA配列を変えるのではなく、エピジェネティックな変化──すなわち、遺伝子の“読み取り方”に影響を与える形で起きていた(Robaire et al., Environmental Research, 2021)。

つまり、EDCsによる変化は「突然変異」ではなく、「遺伝子のスイッチの入り方」のような調整に近い。しかもこの変化が、次の世代に引き継がれる可能性がある。これは、未来に生まれてくる子どもたちが、私たちの“選択”によってすでに何かを背負わされている、ということを意味している。


エピジェネティックな変化──すなわち、遺伝子の“読み取り方”に影響を与える
エピジェネティックな変化──すなわち、遺伝子の“読み取り方”に影響を与える

ハリィ(締めくくり)

私たちは今、かつてなかった問いに直面している。「目に見えないものによって、未来がどう変えられるのか」──科学は、その輪郭を描き始めている。次に問われるのは、私たち自身の態度だ。



ハリィ

私たちは今、かつてなかった問いに直面している。「目に見えないものによって、未来がどう変えられるのか」──科学は、その輪郭を描き始めている。次に問われるのは、私たち自身の態度だ。


📚 参考文献一覧

  1. Robaire, B. et al. (2021).A cross-species comparative approach to assessing multi- and transgenerational effects of endocrine disrupting chemicals.Environmental Research, Volume 200.https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S001393512101358X

  2. Science Journal for Kids (2022).How do chemicals affect animals and their kids?Educational summary of the above research for younger audiences.https://www.sciencejournalforkids.org/articles/how-do-chemicals-affect-animals-and-their-kids/

  3. U.S. EPA – Environmental Protection Agency.What is endocrine disruption?Comprehensive government resource on the basics of EDCs.https://www.epa.gov/endocrine-disruption/what-endocrine-disruption

  4. Endocrine Society.Endocrine Disrupting Chemicals (EDCs): What You Can Do.Advice for individuals on reducing EDC exposure.https://www.endocrine.org/topics/edc/what-you-can-do

  5. Zoeller, R.T. et al. (2012).Endocrine-disrupting chemicals and public health protection: a statement of principles from The Endocrine Society.Endocrinology, 153(9), 4097–4110.https://doi.org/10.1210/en.2012-1422

  6. Vandenberg, L.N. et al. (2012).Hormones and endocrine-disrupting chemicals: low-dose effects and nonmonotonic dose responses.Endocrine Reviews, 33(3), 378–455.https://doi.org/10.1210/er.2011-1050

  7. EURACTIV (2020).Disrupted: the endocrine disruptor debate.Policy and political perspectives on the regulation of EDCs in Europe.https://www.euractiv.com/section/science-policymaking/opinion/disrupted-the-endocrine-disruptor-debate/

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