🌿 調和か共存か?――自然災害とどう向き合うか、ネパールと日本の山から考える
- タヌキのタック

- 2025年4月7日
- 読了時間: 7分
タヌキのタックーの、やさしくまじめな自然と防災の話
🐾 はじめに
こんにちは、僕はタヌキのタックー。山と森のあいだで静かに暮らしながら、人間の世界を少し離れた場所から見守っている。
この前、山道を歩いていたときのこと。崩れかけた斜面と、途中で通行止めになっている小道を見つけたんだ。ああ、数日前の大雨で地滑りがあったのか……って思いながら、ふと考え込んでしまった。
「どうして自然のことが、こんなふうに“危ないもの”になっちゃうんだろう?」って。
第1章:🌍「自然災害」とはなんだろう?
地震、津波、台風、洪水、土砂崩れ。どれも自然がつくる現象だ。でも、自然そのものが“悪い”わけじゃない。僕らタヌキは、山の揺れに驚いて木の根元に隠れるし、カエルたちは雨が降ると嬉しそうに跳ねまわる。自然は、怖いものじゃなくて、そこにある当たり前のものなんだ。

じゃあ、なぜ人間にとってそれが“災害”になるのか?
実は、災害とは自然の力だけで起きるものじゃない。人間がどこに、どんなふうに住んでいるか。そして、どれだけ備えができているか。そういう条件が重なると、自然現象が一気に人の命や暮らしを脅かす“災害”になる。
たとえば、2015年に起きたネパール大地震。ヒマラヤの山々に囲まれた国で、約9,000人が命を落とした。山間部の村々では、地震による崩落や土砂災害が広がり、救助も支援もなかなか届かない状況だった。住居は石や土でできた簡易なものが多く、揺れに耐えきれなかったんだ。
同じように、日本でも2011年の東日本大震災では、地震そのものよりも津波や原発事故が大きな被害をもたらした。災害とは「自然+社会の条件」が重なって初めて起きる。これが、僕がまず一番に伝えたいことだ。
第2章:🇳🇵 ネパールのアプローチ「自然に寄り添う」
ネパールでは、「災害を完全になくす」ことよりも、「自然とともに生きながら災害を小さくする」ことが重視されている。ヒマラヤ山脈の山あいには、森林を守り、川の流れをなるべく変えずに暮らす村がある。
地震の後、研究者たちは「どうすればこの地域で被害を減らせるか」を考えた。その答えのひとつが、“生態系と地域コミュニティを統合した災害リスク軽減(Eco-DRR + CCA)”という方法だった。
そこには、こんな特徴がある。
🌳 森林再生:斜面に木を植え、土砂崩れを防ぐ
🏠 伝統的建築の活用:地域の気候や土地に合ったつくり方を活かす
🤝 地域の人々が主役:外部の支援だけでなく、自分たちで考えて備える
ネパールの人々は、自然を“コントロール”しようとするより、“寄り添う”ことを選んだ。それは、山や川に宿る精霊を敬う文化が背景にあるからかもしれない。
科学的な防災だけじゃなく、文化や心のあり方まで含めて「調和」を大切にするこの姿勢に、僕はちょっと感動した。

第3章:🇯🇵 日本のアプローチ「自然との共存」
一方で、僕たちの住む日本ではどうだろう。
日本は災害がとても多い国だ。台風は毎年来るし、地震も頻繁。だから、昔から「自然を活かしつつ整える」という考え方で、災害と向き合ってきた。
たとえば:
🛠️ 治山治水の工事:山の斜面にダムや砂防堰堤を築く
🏞️ 里山づくり:人が手を入れながら自然と暮らす環境を整える
🧪 ハザードマップや防災研究:災害のリスクを「見える化」する技術
東日本大震災のあと、日本学術会議では次のような提言を出していた。
🔍「自然災害に強い社会をつくるには、科学的データの共有、自治体・市民・研究者の連携、そして未来を見越した制度設計が必要だ」
つまり、日本では「自然を完全に避ける」ことよりも、暮らしの中で自然と付き合いながら“共に在る”ことを目指してきたんだと思う。
これは、ネパールのような“調和”というより、“共存”という言葉が似合う姿勢だと思うんだ。

第4章:🔁 「調和」と「共存」のあいだにあるもの
自然とどう付き合うか――ネパールと日本では、その答えの出し方に違いがある。
ネパールでは、山の神聖さを守りながら、自然に“寄り添う”暮らしを重視してきた。災害が起きたときも、村人たちは自分たちで道を確かめ、防災マップを手作りして、地域の絆を再確認する。「人と人のつながりが、自然と向き合う力になる」という考え方だ。
一方、日本では古くから災害に備えるための技術が発達してきた。治山、砂防、堤防、ハザードマップ――自然を読み、時に制御しながらも、「暮らしを守ること」を軸に工夫してきた。そして、科学や制度、行政との連携をベースにした「共存」のスタイルがある。
でも、僕にはこう思える。どちらが正しい、というより、どちらも必要なんじゃないかって。
自然を“読み”、人と“つながり”、科学を“活かし”、文化を“敬う”。それが、これからの時代に求められる「山との関係性」かもしれない。
第5章:🏔️ 山とともに生きる「4つの原則」
2015年のネパール大地震のあと、研究者たちは2つのアプローチ(生態系重視・生活重視)を超えて、バランスの取れた「4つの基本原則(ガイドライン)」を打ち出した。
🌱 原則1:地域が主導する(Locally-led)
住んでいる人自身が主役になり、災害にどう備えるかを考える。
♻️ 原則2:持続可能である(Sustainable)
一時的な復興ではなく、自然と暮らしが長く続けられる形を目指す。
📚 原則3:知識を共有する(Knowledge-sharing)
科学と地域の知恵、両方をつなげて対策を立てる。
👥 原則4:誰も取り残さない(Inclusive)
高齢者、子ども、女性など、すべての人が防災の一員であると考える。
この4つの視点は、実はネパールだけじゃなく、日本の里山や小さな集落にも通じると思うんだ。
第6章:🧭 「自然現象」を「災害」にしないために
地震や大雨そのものは、ただの自然の動きだ。でも、その動きが“災害”になるかどうかは、人間の暮らし方と備え方次第なんだ。
日本でも、たとえば山間部で土砂災害が多発している地域を見ると、土地の使い方や住まいの立地、備えの有無によって、被害がまったく異なる。
ネパールの山村では、科学的な設備がなくても、人と人とのつながりや地域の知恵によって命が守られている例もある。逆に日本のようにインフラが整っていても、それを「使いこなせなければ」意味が薄れることもある。
自然災害を防ぐのではなく、自然現象が災害にならないように暮らしを設計する。
これが、ぼくが今考えている、シンプルだけどとても大事なことなんだ。



この図は、「自然災害を災害にしない」ための山岳地域での基本的な防災原則を、4層のピラミッド構造で示した概念図です。各層には、段階的に重要性が増す考え方や行動指針が示されており、山を登るように少しずつ社会や地域の力を育てていくプロセスが描かれています。
🔹 各層の意味(下から上に向かって)
黄色のベース層(最下層) ▶ 基盤:地域の地形・生態系の理解 自然環境や地形の特性を正しく把握し、土砂災害や地震などのリスクが高い場所を把握することが最初の一歩です。
白の第2層 ▶ 行動:生活者の移動や備え 地域住民が安全な場所への移動経路や避難方法を知り、災害時に適切に行動できる体制を整えること。
水色の第3層 ▶ 連携:地域内外との協力・情報共有 住民同士の支え合いや、外部の支援との連携が描かれています。地元の知恵と外部の技術が交差する層です。
青色の頂上層(最上層) ▶ 価値観:共存・包摂の理念 自然とともに暮らし、誰ひとり取り残さない防災のあり方を目指す価値観の層です。この層に立つには、下の全ての層を積み重ねる必要があります。
🐾 終章:タックの問いかけ
自然と暮らすというのは、とても豊かで、でも少しだけ勇気のいることだ。予測できない揺れや雨に対して、完全な安心はない。だけど、どう備えるか、誰と備えるか、それは選べる。
ぼくはこう思う。
自然を恐れるだけじゃなく、自然を無理にねじ伏せるでもなく、
「一緒に、考え続けること」
――それが、ぼくたちが選べる希望の形なんじゃないかって。
📚 参考文献・データ出典
国土交通省「河川等災害統計表(令和5年)」 https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen_db/pdf/2023/2-4-2.pdf
気象庁「1996年以降の主な被害地震一覧」 https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/higai/higai1996-new.html
JICA「ネパール国 地震復興支援プロジェクト ファイナルレポート」 https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/11552718.pdf
ADRA Japan「ネパール地震から8年―コミュニティの“つながり”が生んだ災害への備え」 https://www.adrajpn.org/nepal/10756/
Science Journal for Kids. How can we make mountain disasters less disastrous? https://www.sciencejournalforkids.org/articles/how-can-we-make-mountain-disasters-less-disastrous/
Dujardin, Y. et al. (2018). Ecosystem-based disaster risk reduction in mountain areas. Environmental Science & Policy, Volume 87, Pages 49-59. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1462901118311602
UNDP, FAO, PreventionWeb等(山岳地域の防災管理とEco-DRR資料)




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