魚がごはんを食べられない!?河口で起きている“すれちがい”の物語
- アーシィ
- 4月25日
- 読了時間: 5分
🐚 アーシィのやさしい海日記
川と海が出会う場所
― 河口(エスチュアリ)のひみつ

こんにちは。北の海からやってきた、アザラシのアーシィです。
今日は「河口(エスチュアリ)」っていう、ちょっと特別な場所のお話をしたいなと思います。
🌊 河口って、どんな場所?
河口っていうのは、川と海が出会うところのこと。淡水と塩水が混ざり合って、ちょうどいいバランスの水になる不思議な場所。
そこにはね、たくさんの命が集まるの。小さなエビやプランクトン、そしてそれを食べにくる魚の子どもたち。その子たちを狙う、大きな魚や鳥たちもやってくるよ。
アーシィにとって、河口は「生きものたちの保育園」みたいな場所。みんなが安心して育って、次の世界に旅立てるような、やさしい流れの中にあるんだ。

🌱 自然が水をきれいにする場所
でも、河口のすごいところは、それだけじゃないの。実は、川から流れてきた水を自然にろ過して、きれいにしてくれる場所でもあるんだよ。
畑から流れ出た栄養や、町からやってきた汚れを、河口の泥や植物、そしてプランクトンたちが少しずつ吸収してくれる。まるで、**地球の中にある“水のフィルター”**みたい。
アーシィがまだ小さかったころ、ママはこう言ってたの。「川の終わりは、新しい命のはじまりよ」って。
🌎 地球のバランスの中で生きる
そんな大切な河口は、地球全体の健康にも関わってるんだよ。そこにいる生き物のリズムは、季節や水の温度、雨の降り方、潮の満ち引き…いろんな自然の“音”と一緒に動いてる。
河口ってね、静かに見えるけど、目に見えない「調和の音楽」が流れている場所なの。それを感じると、アーシィの胸もほんのりあたたかくなるんだ。
🐾 でもその“やさしいリズム”が、もし少しずつ狂ってきていたとしたら?
それは…まるでオルゴールの音が、ある日、少しだけ早くなったり遅くなったりして、それに合わせて踊っていた生きものたちが、タイミングを外してしまうみたいなこと。
そんな「ずれ」が、今、河口(エスチュアリ)で実際に起きているんです。
それでは、ここからは…
魚がお腹をすかせている理由
〜リズムのずれがもたらす“ミスマッチ”とは?〜
🎣 想像してみてください。
あなたは、まだ小さくてお腹をすかせた若い魚。川と海が出会う河口で、これから海へ旅立つ前に大きくなろうとしているところです。
食べるのは、海の中をただよう小さな生きもの──プランクトン。彼らは春のある時期に、ちょうどよいタイミングで現れてくれるから、あなたは育つことができます。
でも、それって本当に「いつも当たり前のように起きること」なんでしょうか?

☀️ そのタイミングをつくっているのは…
水温
太陽の光
塩分の濃さ
雨や雪どけ水の流れ
こういった自然の「合図」がぴったりと揃ってこそ、魚とプランクトンは同じ場所・同じ時間に出会えるのです。
でも今、その合図が狂い始めている──それは、人間が引き起こしている「気候変動」が関係しているんです。
🔥 気候変動で起きていること
春が早くやってくるようになった
水温が上がりすぎるようになった
雪どけの時期が変わってしまった
河口に流れ込む水の量が減った
その結果、プランクトンは早く出てくるようになり、魚はまだ来ていない。あるいは、魚が来ても、もうプランクトンは減ってしまっている──。
それが、科学の世界でいう「フェノロジー・ミスマッチ(生きものたちのタイミングのズレ)」。
📉 西ヨーロッパ最大の河口で見つかった“ずれ”
研究者たちは、フランスの「ジロンド河口」で25年間にわたるデータを調べました。その結果、魚とプランクトンが一緒にいられる時間が、どんどん短くなっていることがわかったんです。
つまり、魚たちはお腹をすかせたまま、次の海へと旅立たなくてはならないかもしれない──。
そしてこれは、河口という場所が果たしてきた「命を育てる機能」そのものが、弱まっているサインでもあります。
🧭 アーシィの気づき
わたしは、家族を失ってからずっと思ってた。「自然はもう、わたしたちの味方じゃないのかな」って。
でも違ったの。
自然は、まだがんばってる。
ただ、その“がんばり”が追いつかなくなってきているだけなんだ。
だったら、今度はわたしたちが、自然の味方にならなくちゃ。
🔍 自分で“水の声”を聞いてみよう
〜アーシィからのやさしい学びのヒント〜
「知ること」は、未来を変える最初の一歩。アーシィと一緒に、河口のリズムや気候の変化について、あなた自身の方法で学んでみてほしいな。
ここに、いくつかのヒントをのせるね。
🌍 1. 地図を広げてみよう
自分の住んでいる近くに「川と海が出会う場所(河口域)」があるか調べてみよう。
その場所はどんな名前? どんな魚や鳥がいる?
📎 Googleマップや国土地理院地図、環境省の自然観察マップが役に立つよ。
🌊 2. 水の流れを知ろう
川の水はどこから来て、どこへ向かっているの?
雪どけや雨、ダムの水は河口にどう影響しているんだろう?
📎 「流域図(りゅういきず)」で調べると、水の旅が見えてくるよ。
🌱 3. 自然のタイミングを記録してみよう
春になったら、どんな花が咲いている?
川に魚が上ってくる時期や、鳥の鳴き声が変わるのはいつ?
📎 スマホのメモや写真で記録をつけてみて。「フェノロジー日記」って言うんだよ!
🧪 4. 科学者の調査と比べてみよう
アーシィが話してくれた研究と、自分の地域では何が同じで、何が違うかな?
それを自由研究のテーマにしてもいいね!
📎 先生や図書館、科学館にも聞いてみよう。「地元の川を調べたい!」って伝えれば、きっと応援してくれるよ。
💬 5. 話してみよう
今日の話、誰かに話してみよう。
「こんな不思議な場所があるんだよ」「魚がごはん食べられなくなってるって知ってた?」って。
📎 自分の言葉で伝えることは、自然を守る“最初の活動”なんだよ。
📚 参考にした研究や資料
Chevillot, X., Drouineau, H., Lambert, P., Carassou, L., Sautour, B., & Lobry, J. (2017). Toward a phenological mismatch in estuarine pelagic food web? PLOS ONE, 12(3), e0173752.
Teach Ocean Science:Estuaries and Climate Change (Lesson Plan)University of Maryland Center for Environmental Science
National Wildlife Federation: What is Phenology?
EPA: Estuarine Science
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